旧岡山県総合文化センター(現岡山県天神山プラザ)は、旧岡山県庁があった天神山に図書館を中心とした文化施設として1962年にオープン。設計はル・コルビュジエに師事した建築家前川國男によりおこなわれました。現在も岡山天神山プラザとして芸術文化活動や文化情報発信の拠点として岡山県民に親しまれています。
建築家 前川國男
1905年 新潟生まれ
1928年 東京帝国大学建築学科卒業
卒業後渡仏しル・コルビュジエに学ぶ
1930年 アントニン・レーモンド事務所入所
1935年 前川國男建築設計事務所を設立
1954年 神奈川県立音楽堂・図書館
1957年 岡山県庁舎
1961年 東京文化会館
1975年 東京都美術館
1979年 福岡市美術館
1986年 逝去
岡山県庁舎
前川國男は、東京帝国大学時代に岸田日出刀助教授よりル・コルビュジエの本をもらい弟子入りを決意し、卒業の夜にパリに向かいました。戦前パリのル・コルビュジェに学び、帰国後はアントニン・レーモンド事務所に入所するなど近代建築を日本に根付かせる足掛かりとして先進的な技法を精力的に取り入れ戦後の日本の近代建築を牽引していきました。
国際文化会館(1955年:前川國男、坂倉準三、吉村順三共同設計)
東京文化会館
旧岡山総合文化センター
1961年に竣工した岡山県総合文化センターは、図書館と展示室、300席ホール、日米文化センターの4つの機能をもった総合文化センターです。設計者は岡山県庁舎に尽力したことより前川國男氏が選ばれました。この時期の前川國男氏はル・コルビュジエが設計した東京上野の国立西洋美術館(1959年)や代表作となった東京文化会館(1961年)を手がけていた時期でもあり、ル・コルビュジエの影響を色濃く受け、50歳代であった前川國男氏にとってはモダニズム建築作品がもっとも充実した頃につくられました。
国立西洋美術館
ル・コルビュジエの影響
ル・コルビュジエのペサックの集合住宅
前川國男氏の作品の中でル・コルビュジエの色使いに影響されている作品の一つです。入口のピロティの天井一面を黄色で仕上げているのはこの施設のみです。
暗い空間になりやすいピロティであるが、天井一面を黄色にすることで明るく感じることができます。
ピロティ、木目のあるコンクリートの柱、連続窓にブリーズ・ソレイユ(ルーバー)や大庇などル・コルビュジエが好んだ建築手法を取り入れながら前川國男氏の特徴である網代張りタイル(ヘリンボン柄)と北側の庭園(入口左側)を上手くまとめています。
建物特徴
1階ピロティ
敷地が手前の道路から8mもの高低差がある傾斜地で、予算も厳しかったことより、2階図書館(現在はホール)を大きな箱として柱で浮かせています。これは4つの施設の性格がそれぞれ違うため、その下から奥の展示室やホールに入れるようにしています。
ホールにはイベント前後に大勢が一斉に出入りするのに対し、図書館等は随時人が訪れるため動線を分けています。
1階ピロティ
北側の庭園から
敷地の東側(奥)に寄せて南北に長い1階を置き、その上に東西に長い2階をT字型に重ね、はみ出た2階の下をピロティとしています。
コルビュジエはルーバーを好んで取り入れていました
レリーフ
彫刻家の山縣壽夫氏によるもので、この作品を手がけた後にイタリア政府留学生として渡伊しマリノ・マリーニ氏に師事。帰国後は日本各地のモニュメント、公共建築物等のレリーフを手掛けた。
正面中央の外階段
ピロティを奥に進むと展示室やホールとなっている。手前の階段(崖側)を上ると2階の図書館(現在は展示室)に直接向かう機能とすることでさまざまな文化活動を行う市民がピロティで交わりながら、それぞれの場所に向かわせています。
コルビュジエ的デザインが随所で見られます
2階図書室(現展示室)ホール
コルビュジエのチャンディーガルでも使われた大庇
天井の青色
天井の青色は、前川國男氏が好んで用いたオリジナルの「成層圏ブルー」と呼ばれる青色が使われていますが、青色は単色の作品を制作するモノクロニズムを代表するフランスの画家イヴ・クラインからの影響とも思われます。
イヴ・クライン《青のヴィーナス》
ベネッセハウスミュージアム
イヴ・クラインは、1948年頃から、単色によるモノクローム絵画の制作を始めましたが、1957年にミラノのギャラリーで開催された個展で、オリジナルの青色顔料「インターナショナル・クライン・ブルー(IKB)」を使用した作品群を発表し、一躍注目を集めました。この青色顔料のIKBは黄金より貴重と言われました。
これらの抽象表現主義の作品に触発された前川國男氏は、夜空の星のように散りばめられた照明や三角形状に彫り込まれたハイサイドライトなどの意匠を取り込みモダニズム的なロビーをつくりあげた。また、同時期につくられた東京文化会館にも同様の天井が用いられています。
東京文化会館ホール
壁の切込み
ルーチョ・フォンターナ
ホールのロビーは、戦後のヨーロッパにおける抽象表現主義の影響を受けています。
空調用の吹き出し口としてつくられた壁の切れ込みは、イタリア画家のルーチョ・フォンタナによる「切り裂かれたキャンパス」シリーズ。1958年頃から開始された切り裂かれたキャンパスは最も革命的な表現でかつ偶像破壊的表現と言われました。
赤と青
この時期の前川國男氏はル・コルビュジエの影響を強く受けていた時期でもあり、色使いなどル・コルビュジエ的なデザインによりまとめられています。その中でも、一部にプレキャストコンクリートを用いてテクニカルアプローチに取組んだり、ヨーロッパの抽象美術から触発されたデザインやヘリンボンのタイル、和風庭園など前川國男氏のオリジナリティを上手く融合させた遊び心満載のモダニズム建築となっています。