淡路夢舞台|建築家 安藤忠雄

兵庫の名建築

淡路夢舞台

淡路夢舞台

淡路夢舞台は大阪ベイエリア開発のために土砂採掘された岩盤が露出し荒れ果てた土地を回復させることを目的として計画され、建築家安藤忠雄によりグランドデザインされた複合総合リゾート施設です。

 
土砂採掘された跡(開発前の淡路夢舞台)

土砂採掘され岩肌となった淡路夢舞台用地

 

ブッチャートガーデン

淡路夢舞台を回復させるにあたって参考としたのがブッチャートガーデンでした。

ブッチャートガーデンはカナダのビクトリアにあり、ロバート・ブッチャート氏が経営していたセメント製造事業によって残された石炭岩採石場跡。この採石場跡地の無惨な姿に心を痛めた夫人のジェニー・ブッチャートが手を入れたのが庭園の始まりです。東京ドーム約5個分の広大な敷地には、700種類以上、100万株以上の植物が植えられた公園となっており現在年間100万人が訪れる観光地となっています。

ブッチャートガーデン

ブッチャートガーデン

阪神・淡路大震災

淡路夢舞台は、明石海峡大橋の開通する1998年にあわせて完成する予定で計画が進められていました。すでに実施計画をほとんど終え、着工間近となった時に阪神・淡路大震災が起こりました。敷地内には活断層が走っていたため、誰もが中止を覚悟する中、貝原兵庫県知事はこれを復興プロジェクトと位置づけ、断固たる決意で継続の道を選択しました。
 

淡路夢舞台階略図

淡路夢舞台概略図

 
安藤忠雄氏はこのプロジェクトについて後に話しています。「コツコツと続ければ世界の課題を解決できるものをつくるということに、一歩でも踏み込みたいとの思いでやらせてもらった。困難な局面にぶつかった際にはいずれも考えて道を切り開いてきた」と語り、「考えることで前に進むことができる。日本には資源もエネルギーもない。知恵を絞る力を養わなければならない」と力説されています。
 

百段苑

活断層による計画変更に際し百の花壇からなる庭園を新たに設計に加えました。4.5m×4.5mの花壇が階段状に100個集まってできています。百は20世紀から21世紀への百年という時間単位を表したものです。それらは震災で亡くなられた人々のための鎮魂のモニュメントとして設計されました。
そして、ここに植えられたのは100種類のキク科植物でした。

淡路夢舞台百段苑
淡路夢舞台百段苑

100区画ある花壇の周りをあらゆる方向から階段が連なっています。人工と自然が見事に融合した幾何学な造形を洗練させた形となっています。
 

淡路夢舞台 百段苑

ダイナミックな施設群

淡路夢舞 台滝と空庭

水盤から流れ落ちる滝と空庭

 
淡路夢舞台 円形フォーラム

楕円フォーラム

 
淡路夢舞台

複雑な動線と施設群

建築家安藤忠雄による淡路夢舞台

直径32m、高さ11mの円形の広場で夢舞台全体の動線の中心となる施設。石壁沿いにはスロープや階段が設置されており、人々の動きの中心となる構成となっている。

コンクリートの打ちっ放しによるダイナミックな施設群と緑の再生、静謐な静けさの中の滝の音は廃墟となった古代の遺跡のなかにいるような感覚を一瞬もってしまう。

安藤建築の教会

安藤忠雄氏の初期の教会三部作として風の教会(兵庫県神戸市)、水の教会(北海道)、光の教会(大阪府茨木市)があり、それぞれ高い評価を受けています。淡路夢舞台にはホテルの脇にコンクリート通路でつながれた「貝の浜」に海の教会が設置されています。
チャペル空間は立方形となっており、天井に切り取られた十字のスリットを通して光が差し込んで、正面のスクリーンに光の十字架を映し出しているような演出が幻想的な空間となっている。

淡路夢舞台 海の教会
淡路夢舞台 海の教会
美しいコンクリートのうち放しとトップライトからの自然光
淡路夢舞台 教会に続く通路

教会に続く通路

淡路夢舞台 教会から屋上へ行く通路

教会から屋上へ行く通路

安藤忠雄の思い

淡路夢舞台を訪れる人々に、水、風、光、陰、空、山、そして海など、日常見過ごしてしまいがちな自然の様相をどれだけ感じ取ってもらえるか。
 

淡路夢舞台
 

21世紀はもはや、放っておけば自然が環境を整えてくれる時代ではなく、一人ひとりが強い意志をもって、積極的に自然に働きかけながら、環境と共生していかなければならない時代です。庭の木々や小川、六甲山や大阪湾といった身近な自然から地震などの天災も含めた地球規模の長期変動に至るまで、私たちが生きている「環境」に対する意識を少しでも高めるきっかけになればと考えています。

2000年という節目の年に誕生した夢舞台。これから千年の時を超え、水と緑に囲まれて、人々に勇気を与え続ける場所に育ってほしいと願っています。

 「21世紀の夢の舞台」 安藤忠雄 より

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