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海の駅なおしまの魅力を探る|SANAA

瀬戸内の名建築(香川県)

建築ユニットSANAAの設計による海の駅なおしま

フェリーを待つ人でにぎわう海の駅なおしまは、文化芸術の島である直島の玄関口となる宮浦港のフェリーターミナルです。建築家妹島和世と西澤立衛により設立されたSANAAによってつくられた島のシンボルである海の駅なおしまの魅力をみていきます。

SANAA

建築家ユニットSANAAによる金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館

 
1995年SANAA設立
建築家妹島和世と建築家西澤立衛による建築家ユニット。
1996年 熊野古道なかへち美術館竣工
2004年 金沢21世紀美術館竣工
2009年 ROLEXランニングセンター竣工
2012年 ルーヴル・ランス竣工

「環境と建築」というテーマに長年取り組んできたSANAAは、内と外を緩やかにつなぎ回遊性を高めることで、人々の豊かで自由な交流と、周辺地域との新たな関係の可能性を提示してきました。
 
曲線とガラスを多用した建築が特徴的で、建物は境界をつくり出すのではなく、媒介となり、人々の暮らしと環境が織り交ざった一つの風景となる建築のあり方を実現しています。

海の駅なおしまの特徴

コンセプトは「島のエントランスとしての大屋根」
設計当初は、直島のランドマークとなるようなシンボルタワーとするような案なども挙がっていたが、目立ちすぎるタワーは自然豊かな直島に対して暴力的になるのではないかとの結論に至り、大屋根案に行きつきました。
 

建築家妹島和世と西澤立衛との建築ユニットSANAAによる海の駅なおしま
 
スチールプレートでできた大屋根は薄い鋼板で軽やかに見え、その屋根を支えるのはわずか直径85㎜のスチール柱であり、ターミナル全体は軽々しい印象を与えています。山の稜線を遮ることなく、島の景色に溶け込んだフェリーターミナルとなっています。

建物外観

高さ5m、縦横70m×52mの3,600㎡の大きく軽やかな大屋根が敷地のほとんどを覆っており、フェリーに乗船する人たちや車、トラックなどが建物とより一体的で密接な関係となるようになっています。
 

建築家妹島和世と西澤立衛により設立されたSANAAによってつくられた海の駅なおしま
 
各内部空間をガラス張りにすることで内外の境界をなくし、街に開かれた空間となっています。
 
海の駅なおしま
 
大屋根の下の空間は、大部分が外部と連続した半屋外空間となっています。この半屋外空間が内部空間と外部空間の境界を曖昧にし、誰もが気軽に入りやすい海の駅をつくりだしています。この半空間には車が通行したり待機したりするスペースもつくられています。
 
海の駅なおしま
 

柱のスパン約7mで大屋根を支える柱は、極限を超えているように感じられ、「島旅」に来た来島者の緊張化や高揚感をより一層強くさせるだけでなく、非日常的な感覚を呼び起こさせています。

ディティール

梁同士の接合部分や柱と梁の接合部分も余計なものが一切なくスッキリとしています。また技術的に難しい、柱と床面の取り合いをごく自然につくりあげています。
 

建築家妹島和世と西澤立衛により設立されたSANAAによってつくられた海の駅なおしま
 
地震力を受け持つ耐力壁を天井まで高さのある鏡壁とすることで、街並みや海の風景を映し出し、視界の妨げにならないようにするとともに、透明感を演出しています。
 
天井はデッキプレートをそのまま使う低コストな仕上げにも思えますが、その波型から生まれるストライプ模様が空間の奥へ伸びることで遠近感を与えています。外が明るい場合は、内部空間が徹底的に暗くなり、建物の内外に強い陰影を生まれさせています。

内部デザイン

建築家妹島和世と西澤立衛により設立されたSANAAによってつくられた海の駅なおしま

海の駅なおしま

建築家妹島和世と西澤立衛により設立されたSANAAによってつくられた金沢21世紀美術館

金沢21世紀美術館

ターミナルホール内部の天井は、白く仕上げられていて、そこから落ちてくる円柱は「金沢21世紀美術館」の雰囲気に近い仕上がりとなっています。ただし、ここでのカウンターなどは白で統一せず、力強いコンクリート打ち放しとなっており、安藤建築的なデザインを意識しているとも言えます。

 
建築家妹島和世と西澤立衛により設立されたSANAAによってつくられた海の駅なおしま

機能的特徴

建築家妹島和世と西澤立衛により設立されたSANAAによってつくられた海の駅なおしま

海の駅なおしま

高松港

高松港の船のりば

海沿いにあるフェリー乗り場には、様々な機能が求められています。
海の駅なおしまの床の緩やかな勾配や、カウンターなどの打ち放しコンクリートは台風の多い瀬戸内の島の浸水対策となっています。
 
また、広場の大屋根の下は、船やバスを待つ人々の待機するスペースとなっています。そしてガラス張りの内部空間は視認性が高く、待合室から船やバスの状況がわかり易くなっています。それらは、初めて来島される旅行者にも入りやすい内部空間ともなっています。
建築家妹島和世と西澤立衛により設立されたSANAAによってつくられた海の駅なおしま

船の乗船を待つ人々

建築家妹島和世と西澤立衛により設立されたSANAAによってつくられた海の駅なおしま

行き交う人々

シンプルで軽やかなSANAA流のデザインを前面に出し、来島する旅行者に高揚感を与えつつも、日常生活などで利用する人々にも満足できるディテールや構造、機能という部分も整然と構築できている建築空間となっているのが海の駅なおしまです。まさに、芸術・文化の島である直島の玄関にふさわしいフェリーターミナルとなっています。

 

直島港

 
SANAAのフェリーターミナルとともに、港にある草間彌生の「赤かぼちゃ」とSANAAデザインのメタリックな椅子も直島の旅を楽しませてくれています。



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