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現代アートが楽しめる瀬戸内の現代美術館

有名建築家による現代美術館

現代アートが楽しめる有名建築家磯崎新による奈義町現代美術館

奈義町現代美術館

 

瀬戸内の現代美術館には、メタボリズムの黒川紀章、ポストモダン建築の磯崎新、美術館建築の巨匠谷口吉生、稀代の建築家安藤忠雄から三分一博志、西澤立衛、永山祐子など現代建築を代表する建築家たちが手がけた現代美術館があります。瀬戸内の現代アートと一緒に個性あふれる建築家たちの美術館をたのしみませんか。

広島市現代美術館

建築家 黒川紀章

広島県広島市南区(1989年)

公立では全国初の現代美術館としてつくられた広島市現代美術館は、「第二次世界大戦以降の現代美術」「ヒロシマと現代美術」「将来性ある若手作家」を展示のテーマとしています。
 
建物は、建築家黒川紀章の共生の思想に基づくコンセプトにより表現されています。そこには西洋の二元論から派生する考え方ではなく、さまざまな素材、形、記号を組み合わせることで、歴史と未来、西洋と日本、自然と人間の共生が象徴的に示されていました。

現代アートが楽しめる広島市現代美術館

自然と美術館の共生をはかるため、比治山の森の景観に配慮し、地下埋没型の美術館とし、建物の高さを抑えています。窓は現代アートを意識した多種多様な開口のデザインとなっています。

現代アートが楽しめる広島現代美術館

地下にも展示室があります

現代アートが楽しめる広島現代美術館
現代アートが楽しめる広島現代美術館
広島現代美術館

ヘンリー・ムーア「アーチ」

広島現代美術館

井上武吉「階段モニュメント」

建物の周囲には数多くの野外彫刻が点在していますが、特に重要なのがヘンリー・ムーア作の「アーチ」。1960年代に制作された作品なのですが、このアーチは爆心地の方向に向いています。
 
展示室内の階段部分も作品となっており、彫刻家の井上武吉による「階段モニュメント①・②」です。螺旋階段の中心部が貝の様に渦巻き状の塔となっています。
 
現代アートを楽しむと同時に黒川紀章の共生を楽しめる美術館となっています。
 

 

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

建築家 谷口吉生

香川県丸亀市(1991年)

猪熊弦一郎画伯は、30歳代に渡仏しマティスやピカソと交流。帰国後は新制作派協会に建築部を新設し、前川國男や丹下健三などとも交流していた。50歳代にはニューヨークに渡り制作活動をおこなっていたが、毎週美術館や画廊などをめぐりニューヨークの美術館に精通していた。
 
建築や美術館に造詣の深い猪熊弦一郎と美術館設計の第一人者である谷口吉生との対話によりつくられた美術館は、建物自体を芸術作品として、世界に通用するものとなっていました。

現代アートが楽しめる猪熊弦一郎現代美術館

当時の国内ではなかった、建物、作品、運営がひとつのコンセプトに基づいた美術館であり、大型のオブジェと建築の関係やサイン類のデザインから家具類の選択まで細部に渡り画伯と建築家が話し合ってつくられた。
 
また、美術館は新しく開発される駅前地区であったため、谷口吉生の提案によりハーバード大学タナーファウンテン(タナー噴水)を手掛けたピーター・ウォーカーがランドスケープのデザインを行っています。

現代アートが楽しめる丸亀市猪熊弦一郎現代美術館展示室

美術館の展示室は、1階から吹き抜けとなっており天井も高くなっています。また、壁の最上部と天井面のトップライトの双方から自然光が採り入れられており、開放的な展示室となっています。 
 
この展示室では、ゆったりとしたコンクリート打放しの大壁面を背景に、猪熊作品を代表する円熟期のやや大きな作品が展示されています。

現代アートが楽しめる猪熊弦一郎現代美術館
現代アートが楽しめる猪熊弦一郎現代美術館
谷口建築の特徴の一つでもある、季節や時間によって変化する光と影が、美術館屋上につながる大階段の壁面で楽しめます。
 

ベネッセハウスミュージアム

建築家 安藤忠雄

香川県直島町(1992年)

「自然・建築・アートの共生」をコンセプトにし、直島における最初のプロジェクトとしてつくられた美術館と宿泊施設が併設された滞在型美術館。
 
コンクリートの打放しに白大理石を乱積みした壁がアクセントとなった外観と豊かな自然を感じられるアプローチと建物がアートとなっています。

現代アートが楽しめるベネッセハウスミュージアム

トップライトからの光が印象的な3層吹き抜けと安藤建築の打放しコンクリートによる円形ギャラリーの大空間に置かれている展示作品「100生きて死ね」の存在感は圧倒的である。

現代アートが楽しめるベネッセハウスミュージアム「100生きて死ね」
現代アートが楽しめるベネッセハウスミュージアム
現代アートが楽しめるベネッセハウスミュージアム「100生きて死ね」
現代アートが楽しめるベネッセハウスミュージアム
 
半地下の展示室は、斜面地の傾斜を巧みに活かし、瀬戸内の景観を壊さず、瀬戸内の風景と外部の光を取り入れた明るい展示室となっています。コートヤードの「タイム・エクスポーズド」は、実物の海を挟み込むように世界の海の写真が規則正しくコンクリートの打放しに展示されています。
 

奈義町現代美術館

建築家 磯崎新

岡山県勝田郡奈義町(1994年)

自然豊かな那岐山を背景にした、日本で初めてのインスタレーションと建築が合致したサイトスペシフィックなミュージアム。美術館は、3人のアーティストと建築家磯崎新が何度も協議しながらイマジネーションを具体化させてできた。
 
建築家とアーティストが共同制作した空間的作品は、その現場に来て、中に入って、体験することで、全身体感覚を通じて瞑想することができる美術館となっています。

現代アートが楽しめる奈義町現代美術館

美術館は、作品体感型の三つの芸術空間と図書館で構成されています。それぞれに彩色された直方体、円筒形、三日月型の積み木を組み合わせたような分散型の建築が軸線によって配置されています。
 
荒川修作+マドリン・ギンズの「太陽」(遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体)、宮脇愛子の「大地」そして地元岡山出身の岡崎和郎「月」にて作品が構成されています。
 

現代アートが楽しめる奈義町現代美術館にある宮脇愛子の作品「大地」

宮脇愛子作「大地」

現代アートが楽しめる奈義町現代美術館にある荒川修作の作品「太陽」

荒川修作+マドリン・ギンズ作「太陽」

現代アートが楽しめる奈義町現代美術館にある岡崎和郎作品「月」

岡崎和郎作「月」

地中美術館

建築家 安藤忠雄

香川県香川郡直島町(2004年)

瀬戸内の美しい景観を損なわないように建物の大半が地下に埋設された地中美術館は、クロード・モネの「睡蓮」、ジェームズ・タレル、ウォルター・デ・マリアの作品が恒久設置された美術館です。
 
建築家安藤忠雄を含めた4人の芸術家がそれぞれの世界との向き合い方を表現し「自然の中で生かされる」ことを考えるための美術館となっています。

現代アートが楽しめる地中美術館
現代アートが楽しめる地中美術館の四角コート

四角コート

現代アートが楽しめる地中美術館からみた瀬戸内

地中美術館からみた瀬戸内海

地下でありながら自然光が降り注いでいるため、時間や四季によって作品や空間の表情の変化も楽しむことができます。

犬島精錬所美術館

建築家 三分一博志

岡山県岡山市東区犬島(2008年)

美しい瀬戸内に取り残された産業遺構である犬島精錬所跡をアーティスト柳幸典氏の発案によりギリシャ神話のイカロスをヒントにしてつくられた美術館。設計は「自然に柔な環境を重視した建物」をテーマとして取り組んでいた建築家三分一博志氏によって「あるものを活かし、無いものを創る」というコンセプトの下につくられた。

現代アートが楽しめる犬島精錬所美術館
現代アートが楽しめる犬島精錬所美術館
現代アートが楽しめる犬島精錬所美術館

美術館は、構想から土地取得に7年、建物の設計に3年かけてつくられた。銅の精錬所として創業したが、銅の暴落によりわずか10年で閉鎖。経済活動によって切り刻み搾取された島を、新しい価値を与えようと再生された美術館であった。
 

豊島美術館

建築家 西沢立衛

香川県小豆郡土庄町豊島(2010年)

瀬戸内の自然とアーティスト内藤礼の「母型/Matrix」水・水滴・泉をモチーフにした繊細な作品と建築家西沢立衛の建物が調和した空間体験型美術館。シェル状の構造体の空間が作品のための背景となっているが、そこは宇宙のような無限の環境が広がっていた。

現代アートが楽しめる豊島美術館
現代アートが楽しめる豊島の風景
現代アートが楽しめる豊島美術館

柱一本もないコンクリートシェル構造でできた空間と天井にある2箇所の開口部による自然と建物が呼応する空間は、現代の禅の庭とも思える唯一無二の美術館であった。
 

 

李禹煥美術館

建築家 安藤忠雄

香川県香川郡直島町(2010年)

李禹煥美術館は、直島の自然豊かな海と山に囲まれた谷間にある倉浦の浜に李禹煥と安藤忠雄が互いの世界を響き合わせてつくられた静寂な空間であった。そこでは、石から生成される鉄やコンクリートといった素材を自然石とともに配置されており、人間と自然との対話が促されています。

現代アートが楽しめる李禹煥美術館
現代アートが楽しめる李禹煥美術館
現代アートが楽しめる李禹煥美術館
自然石に挟まれたステンレスのアーチと長さ25m、幅3mのステンレスを道として、地上から海へ、海から地上へと誘う大きな門がつくられた。アーチの下にある回廊を歩くことによって身体感覚が呼び覚まされます。
 

豊島横尾館

建築家 永山祐子

香川県小豆郡豊島町(2013年)

日本の土俗的なモティーフとポップ・アート的な感覚を融合させた独自の表現で注目された横尾忠則による「生と死」を題材とした美術館。
建築家永山祐子による古民家3棟のリノベーションと一部の増築からなる美術館は、建築という三次元表現を絵画的な二次元表現に近づけてつくられています。

現代アートが楽しめる豊島横尾館
現代アートが楽しめる豊島横尾館
現代アートが楽しめる豊島横尾館

非日常空間と日常空間が隣あう立地にある美術館で、建築家永山祐子は「生と死」「日常と非日常」の境界として赤ガラスを用いた。それは、横尾忠則が幼い時に見た戦火が染める真っ赤な夜空であり、同時に血潮がほとばしる生命エネルギーの表象でもあった。
 

ヴァレーギャラリー

建築家 安藤忠雄

香川県香川郡直島町(2022年)

草間彌生の「ナルシスの庭」と小沢剛の「スラグブッタ88」が作品として展示されている美術館。美術館は祠をイメージとして、小さいながらも結晶のような強度をもつ空間として設計されています。

現代アートが楽しめる安藤忠雄が設計したヴァレーギャラリー
現代アートが楽しめるヴァレーギャラリー
現代アートが楽しめるヴァレーギャラリー

「ナルシスの庭」は、1966年ベネチア・ビエンナーレにて初公開されたインスタレーション。会場にゲリラ的に現れて作品を作り、「あなたのナルシズムを販売します」という意味の看板を手に持ち、通行人にミラーボールを販売。販売は中止となったが、この前衛的なパフォーマンスにより草間彌生の名がヨーロッパで知られるようになった。
 
ヴァレーギャラリーでは約1700個の球体を建築のなかだけでなく、自然の芝生と池の上にも同時に展示しています。
地面や水面に置かれたミラーボールが周囲の自然や空、光を捉えて反射します。私たち自身の姿が周囲の世界とどのように関わっているか、無限に広がるような感覚を与えてくれる作品となっています。
 
一方の「スラムブッタ88」は2006の「直島スタンダード2」展で発表されたもの。直島に残る88ヶ所の仏像をモチーフとして、その全ての仏像を調査測量し、豊島で不法投棄された産業廃棄物を焼却処理したあとに最終的に生じるスラグが素材として使われています。
 

ヴァレーギャラリーに展示されている「スラムブッタ88」
 
原始自然信仰やものづくりの原型、自然の循環などを感じさせる積石は、ある種参拝のような手順を想起させ、人々の静かな参加を誘っています。
 


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