瀬戸内には、ル・コルビュジエのモダニズム精神を受けた建築作品が多数あります。時代ととにモダニズムだけでなく、地域の文化や歴史を取り入れた作品がでてきます。後半では、瀬戸内にある日本の新世代を築いてきた建築家たちの「モダニズム精神の変化」を感じれる建築を紹介いたします。
モダニズムからの発展・多様化
コルビュジエの後期ではブルータリズムへと作風が変化していきました。ブルータリズムとは、(フランス語で生のコンクリートを意味する)「béton brut(ベトン・ブリュット)」と呼んだコンクリートによる荒々しい仕上げを特徴とする建物様式のことです。
「ロンシャンの礼拝堂」と共にル・コルビュジエ後期の代表作の「ラ・トゥーレット修道院」は、モダニズムの合理主義的な建築ではなく、直線で表現されている部分が多く、その分迫力を持った独特のダイナミックさが感じられます。
ラ・トゥーレット修道院
1951年63歳で初めて訪れた混沌のインド。その後23回インドへ渡り、チャンディーガルとアーメダバードを中心に携わってきたインドの建築都市計画プロジェクトではル・コルビュジエが唱えた「輝く都市」「アテネ憲章」の理論に基づいて実現。非対称性の中に空間としての視覚的な均衡による近代的な手法や奔放でダイナミックな空間が用いられ、建築家たちに多大な影響を与えた。
チャンディーガル議事堂
チャンディーガル高等裁判所
東京オリンピックが開催された1964年前後から日本は戦後復興期から高度経済成長期へと突入していきます。また、ル・コルビュジエは1965年に亡くなりモダニズム建築の指標を失ってしまいます。その後はル・コルビュジエの精神を受け継ぎながらも、地域の特徴などを活かした独自の手法を加味した作品が生まれてきます。
倉敷国際ホテル
コンクリートの打ちっ放しで急勾配の庇と、それよりも背の低い白壁が、上下に連なる構成。浦部鎮太郎は、若い頃オランダの地域性豊かな近代建築のあり方に接し、時代を超えたその土地特有の建築表現に強く惹かれていた。しかし、倉敷の街並みから着想を得たうえで、それを安易な引用にとどめなかったところに、浦部鎮太郎の独自性があった。丹下健三とは異なる「伝統と創造」の道を歩んでいった。
旧香川県立体育館
国立代々木競技場と同時期につくられた旧香川県立体育館は同じ吊り屋根構造であった。ここでは和船をイメージした造形と彫刻的なブルータリズムの要素を加えた力強い作品となっている。新体育館の建設が進んでおり解体が計画されている。
香川県文化会館
今治市民会館
今治市民会館は、今治市庁舎・公会堂が竣工した6年後の1964年、同一敷地内にて公会堂と向き合う形で増築が決定し、1965年竣工した。市庁舎・公会堂とは対照的に柱・梁のラーメン構造に大きなガラス面と庇を付加したデザインを採用し、広場との一体感を強調した作品となっている。
津山文化センター
津山文化センターは、三大平城の一つである津山城の一角に、市民のためのホールとしてつくられた。徹底的に反復される片持梁とPC製の斗栱は、日本の伝統的な様式をモダニズムと融合させた建物であり、香川県庁舎にも通じる建築であった。
旧戦没学徒記念館
新居浜農業協同組合会館
新居浜農業協同組合会館は、前川國男に師事し、東京文化会館で主担当であった建築家大髙正人が設計。独立後は数多くの農協建築を設計しているが、四国では唯一の農協関連施設。空中架構方式によりブルータリズム的な力強さと自由な平面を実現している。
坂出市人工土地
香川県立石田高等学校
香川県立石田高等学校は大江宏による設計。大江宏は、香川県の高等学校3校の設計をおこなっており、そのうちの一校。大江宏が設計した法政大学の旧会議室棟(現存せず)と同じようにリズミカルなコンクリートシェルの屋根が特徴となっています。
市営基町高層アパート
瀬戸内海歴史民俗資料館
鳴門市文化会館群
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