香川の名建築を楽しむ
香川県には、世界的建築家丹下健三によるモダニズム建築の傑作香川県庁舎や美術館の巨匠谷口吉生による猪熊弦一郎現代美術館など、たくさんの名建築があります。建物の特徴や建築家の意図や想い、建築時の時代背景などを知り、建物の魅力を再認識し楽しみませんか。
旧香川県立図書館は芦原義信が設計。芦原義信は、坂倉準三建築設計事務所で経験を積み、アメリカハーバード大学大学院に留学し、卒業後はマルセル・ブロイヤーを師事した。打ちっ放しコンクリート、雁行する敷石、スキップフロアーなどを見事に表現した芦原義信氏の初期の傑作。
旧香川県立体育館は、吊り屋根を支える巨大な縁梁と側梁、スタンド床を支える格子梁が特徴。国立屋内総合競技場は同時期に同じコンセプト、同じつり屋根構造で造られた双子の建物と言われています。また、共にル・コルビュジエの影響を受けているものの、県立体育館はブルータリズムな建物となっており、全く異なる造形に至っています。
香川県文化会館は建築家大江宏により設計。大江宏は、法政大学の校舎でモダニズムの表現で明るく開放的な近代建築を実現するも、その後の世界視察によって近代主義建築の理念に対する信奉が揺らぎ始めていた。そして、近代主義によって不合理として切り捨てられてきた諸概念の復活として、この香川県文化会館で「混在併存」を表現した。
百十四銀行本店ビルは、竣工時には西日本最大のビルで、日本初の緑青仕上げのブロンズ板で覆われた壁面が特徴的。
日建設計工務(現:日建設計)の若きリーダー薬袋公明が中心となって設計し、ロビーは彫刻家流政之氏がデザインしています。
坂出人口土地
イサム家
マル
イサム家は、イサム・ノグチの日本でのアトリエとした牟礼町の採石場を望む田んぼの中につくられた円型の石壁「マル」の近くに建てられた。移築された丸亀の塩飽町にあった入江邸は、船大工が棟に上がって建てた住宅で、機能美、シンプルさを兼ね備えていた。イサム・ノグチと山本忠司により移築設計された。移築作業には和泉正敏らも加わり完成させた。現在はイサム・ノグチ庭園美術館となっています。
直島小学校
直島小学校は、斯界の権威者である東京大学吉武泰水教授に依頼し、研究室の石井和紘により手がけられた。自然の景観との調和を図り、子供たちの創造力や豊かな人間性の育成を図る設計となっており、その後の中学校や幼稚園なども手がけていくこととなった。
香川県立丸亀高校武道館
丸亀高校武道館は、金子香川県知事から丸亀高校の全面的な建て替えを依頼されて大江宏が校舎、体育館とともに武道館を設計。鉄筋コンクリートの骨組の中に木造の造作をはめ込んでいます。当初は丸亀高校の武道館であったが、現在は香川県の武道館として一般に開放されています。
瀬戸内海歴史民俗資料館
瀬戸内海歴史民俗資料館は、香川県庁勤務の建築家山本忠司により設計。山本忠司は、香川県庁舎建設などを通じ丹下健三を始め新進気鋭の建築家や芸術家などとの交流を深め地域の活性化を図っていった。その中で地域に根ざした独自性について考えるようになっていった。
四国村(現四国村ミウゼアム)
四国村(現:四国村ミウゼアム)は、カトーレック株式会社加藤達雄代表が失われつつある日本の伝統的な民家や暮らしの知恵を伝承する目的で開館した民家博物館。
四国の古民家だけでなく彫刻家流政之による「流れ坂」、建築家安藤忠雄による四国村ギャラリーや建築家川添善行が手がけた「おやねさん」など見どころはたくさんあります。
直島町役場
直島町役場の設計は、1970年代から80年代にかけ直島の建築群を手がけた建築家石井和紘。
直島町役場の計画に際して住民と話し合いを重ね、伝統的な町並みが残る本村地区の景観に合う軽やかな和風の数寄屋が選択された。京都西本願寺の飛雲閣を始めとして、様々な日本の古建築のモチーフを取り入れたポストモダニズムのデザインとなった。
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
猪熊弦一郎現代美術館は、猪熊画伯が指名した建築家谷口吉生氏との対話によって美術館設計が進められた。猪熊画伯が目指したのは他の美術館の手本となるような、また世界にも通用するような美術館であった。
さぬき市野外音楽広場テアトロン
風光明媚な瀬戸内海の風景と音楽を楽しめる中四国一の規模をほこる多目的な屋外施設。テアトロンは、大串半島をエーゲ海に面したペロポネソス半島に見立ててつくられた、ギリシャ風の円形劇場となっていた。
ベネッセハウスミュージアム
ベネッセハウスミュージアムは、「自然・建築・アートの共生」をコンセプトとして直島につくられた最初の美術館。瀬戸内海を望む高台に建ち、大きな開口部から島の自然を内部へと導き入れる構造は、これまでの美術館と一線を画すミュージアムとなっていた。
直島メソッドの出発点となったミュージアムの魅力をみていきます。
東山魁夷せとうち美術館は、東山画伯の遺族の指名により長野県東山魁夷館を設計した谷口吉生により設計された。東山画伯を知り尽くした谷口吉生により、東山画伯の版画と瀬戸内の風光明媚な景色を見事に融合させた小さな美術館。
地中美術館
「自然と人間の関係を考える場所」としてつくられた地中美術館は、瀬戸内の美しい景観を損なわないよう建物の大半が地下に埋設された。館内にはクロード・モネの「睡蓮」、ジェームズ・タレル、ウォルター・デ・マリアの作品が安藤忠雄設計の建物に恒久設置されています。
建築家安藤忠雄を含めた4人の芸術家がそれぞれの世界との向き合い方を表現した美術館であった。
海の駅なおしま
海の駅なおしまは、妹島和世氏と西沢立衛氏の建築家ユニットSANAAによる設計。直島の風景を壊すことなく、海の水平線をそのまま陸へとつなぐような真っ直ぐな屋根は伸びやかなランドマークとなっている。70m×52mの薄い屋根と細い柱、鏡面仕上げの壁が特徴。直島を訪れる人々を草間彌生氏の赤かぼちゃと妹島和世氏のドロップチェアとともに出迎えてくれる印象的なゲートである。
豊島美術館
豊島美術館は、瀬戸内海を望む豊島唐櫃の小高い丘に建設されたアーティスト内藤礼と建築家西沢立衛による美術館。日本の原風景である棚田と日本人建築家と日本人アーティストのコラボによる美術館は、まさに現代の禅の庭であった。
李禹煥美術館
建築家安藤忠雄の打放しコンクリートをキャンバスにし、アーティスト李禹煥の「間」や「余白」を体験することができる美術館。有機的な自然の中に安藤建築の人工的なコンクリートの幾何学が挿入され、人工と自然の間に緊張感を持たせています。また、ヴェルサイユ宮殿の李禹煥展覧会にてつくられた大型アーチを直島でも挑戦したいと安藤忠雄氏に相談して実現した無限門が海に向かってつくられています。
男木島交流館
男木島交流館は、高松港から約40分の男木島港に瀬戸内国際2010でつくられた。デザインはスペインの現代芸術家ジャウメ・プレンサの作品「男木島の魂」。齊藤正が実施設計を行っている。
プレンサが現地を下見して送られてきた当初案は、建物の上に巨大な大仏像のようなものが鎮座していた。この案はさまざまな制約のため実現できなかったが、2014年「虎ノ門ヒルズ」の広場に設置された。
決定案は、自らの住居を自分自身でつくる貝からインスピレーションを受けたもので、長い年月をかけて自分たちの文化をつくり、それを守る努力を続けている男木島の人々に敬意を表したものであった。
豊島横尾館
アーティスト横尾忠則の「生と死」作品と永山祐子の建築が一体となった空間は、常に変化し循環し続けるシーンの集合体となり、建物は横尾作品のコラージュのように、作品とスクリーンによって生まれたシーンが3次元空間の中で一体となっていた。
直島ホール
直島ホールは、建築家三分一博志が直島周辺の風や水、太陽の動きと植物、集落を2年半にかけ調査し、直島の暮らしの知恵と街区や建物の美しさをデザインした建物。ホール、集会所、庭園で構成され、2棟の異なる檜の大屋根が特徴。
ホールの天井は日本の伝統的な素材の白漆喰で仕上げられています。
やしまーる
屋島山上にできた展望台「やしまーる」は、建築家周防貴之が妹島和世建築設計事務所から独立後最初に挑んだプロポーサルであった。
周防貴之は、観光の地として役割を終えつつあった屋島山上を次の時代に継承すべく、建築がこれからのあり方を見つけるきっかけとなれる施設として取組んだ。
時の納屋
風光明媚な瀬戸内海の風景を楽しめる大串半島。瀬戸内クルーズ船ガンツウをデザインした堀部安嗣によりつくられた「時の納屋」は、瀬戸内の風景を活かした讃岐の原風景となっていました。
高松城月見櫓は、全国に現存する12基の三重櫓の一つである。武家諸法度により城の修復が厳しく制限されるなか、松平頼重は幕命に従うかたちで高松城の大規模な修繕をおこなっていった。天守を新装するとともに、艮櫓とともに月見櫓を三重櫓として新設。櫓の四重以上は必然的に天守扱いとなるため、櫓の中で最大かつ最高格式となるのは三重櫓で「御三階」とも呼ばれる貴重な櫓である。
豊稔池堰堤は、中世ヨーロッパの古城を思わせる威容と風格を持った国内で唯一のマルチブルアーチ方式のダム。スコットランドでダム技術を学び、布引ダムなど神戸にある複数のダムを手掛けてきた佐野藤次郎が顧問となり設計。当時の最先端技術であったマルチプルアーチ方式を採用した。国の重要文化財。
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