宮島弥山展望台
弥山展望台は、建築家三分一博志により日本三景の一つ「安芸の宮島」の最高峰である弥山山頂に設置された展望台。周囲360度の絶景を遮るものはなく、瀬戸内の営みを感じることができる展望台であった。
厳島神社
宮島の動く素材
三分一博志氏は、厳島神社は世界で最も美しく、自然の営み「動く素材」を表現している建物だと考えている。瀬戸内の干満は約6時間おきに、およそ3mの水位の変化を繰り返し、社殿回廊の水平ラインがあることで初めてその動きが視覚化されていくことを理解していた。
弥山展望台建替計画
宮島は信仰をはじめ、舞楽の舞台、時には合戦の地となってきました。豊かな自然の中、弘法大師により開基した弥山、平清盛による厳島神社の社殿や伊藤博文が「日本三景の一の真価は頂上の眺めにあり」と語った弥山山頂周辺にはさまざまな巨岩奇岩など数多くのスポットがあります。
老朽化による弥山展望台建替に際し広島県内で活躍している若手建築家5名に企画提案を依頼した。
選考基準
- 取組意欲
- コンセプトの的確さ
- 瀬戸内海のシンボルとしてのふさわしさ
- デザインの独創性・実現可能性
- 維持管理への配慮
弥山山頂
三分一博志のコンセプト
三分一博志氏は、神聖な山岳信仰の場でもあった弥山における「座」の重要性に着目した。座るという行為を引き出せるように頭近くまで伸びる深い庇を設け、座りたくなる展望台とした。
庇は格子とルーバーにより隙間をもった構成とし、強い風雨などの自然に逆らわないディティールとしている。これは厳島神社の回廊の隙間の原理に倣っている。
2階の座は景色を見渡せるよう四方に開いた回り縁とし、靴を脱ぎ、床に座ってゆっくりと展望することで、景色だけでなく瀬戸内の自然の営みを感じることができる展望台となっている。
二階建てに屋上のある展望台が埋もれるように頂上に伏せている。中央のコアから深い縁と庇が廻る「座」の間である。
まるで石庭のような雰囲気を感じることができる
屋上に使われている杉材は、原生林が生い茂る宮島の景観に溶け込んでいる。