六甲枝垂れは六甲山で最も標高の高い地点につくられた展望台です。888mからのパノラマビューの美しさを三分一博志がさらなる魅力を付け加えた自然体感展望台となっています。
三分一博志のテーマ
犬島精錬所美術館
三分一博志氏は建築がいかにして地球の一部になりうるかを一貫したテーマとして取り組んでいます。
「地球にも人にも認めてもらえる建築」を創造するための入念なリサーチは土地の歴史や風土から人と自然の営みを紐解くとともに、地形や方位によって姿を変える「動く素材」風・水・太陽などを丹念に観察し、それらを分析することで、あるべき建築の姿を探求し、その地域にあった建築をつくっていきます。
三分一博志氏は、設計段階から四季折々に現場に足を運び「動く素材」を観察し、自らカメラに収めていった。これらのリサーチに基づいた作品は、その場所特有の建築であることを超え、さらに未来への引き継がれていくことを目指しています。
六甲枝垂れの特徴
三分一博志氏は「これからの時代、この場所で何を眺望する必要があるのか」という問いに立ち、六甲山自体(私たちの暮らす地球)を眺望する額縁となることを意図して六甲枝垂れを設計しました。
コンセプトとして「山の上に立つ一本の大きな樹」として、新たなスタイルの体感展望台として取り組んでいます。
展望台は上にあがって歩くものであるが、六甲枝垂れでは一度座って止まってみることで動いているものを見て体験する展望台となっています。
六甲で一番標高が高いここでは水が変化しており、氷や雪が起こっている
→水の変化を伝えることがふさわしいのでは。
六甲山山頂の環境は風速5m、温度マイナス5℃、湿度が多い。
→六甲山全体が樹氷になるとき、施設全体も一体となってほしい。
→スチールと檜の枝材を組み合わせたフレームにより枝材に樹氷を着氷させる。
展望台外観
展望台は枝垂れをイメージさせた直径16mmのドーム状のメッシュフレームに覆われておりステンレスパイプと檜の短い枝材は高度な加工技術や特殊な接合器具に頼らず、人の手で編むように組むことで自立しています。
それぞれの材をずらして重ね合わせることで連結し、相互に支え合って、空間を生み出しています。
そして、フレーム面があらゆる方向へ凹凸に組まれ、空中に印象的なオーガニックなボロノイ形状を形成します。このボロノイ形状に粗密の変化を持たせることにより、ドーム内環境を六甲の自然と切り離すことなく、光、空気の流れ、氷霜の訪れをゆるやかにコントロールしています。
実際に樹氷が付いた木々をリサーチして作られており、檜のサイズにも秘密があります。上部にいくほど密に組まれており、樹氷をイメージしています。また、檜のフレーム「枝葉」は壁や床からも檜の香りが漂うことで、森林を思わせるつくりともなっています。
展望台内部
展望台内部には冬に凍結した天然水を貯蔵する「氷室」があり、山上に吹く風を取り込んで冷却し、電力を一切使用せずに涼を感じる「冷風体験」などのエコな試みも行われています。
展望台東側に位置する「氷棚(ひょうだな)」で雨水を溜めて天然の氷を作り、毎年大寒の頃チェーンソーを使って切り出します。切り出した氷は、展望台内部にある「氷室(ひむろ)」に貯蔵します。
その氷は夏まで貯蔵するため「六甲枝垂れ」内部にある「氷室」に運び入れられます。
風を展望台内部に取り込む
冬は太陽の日差しを最も受ける場所に「陽室(ようしつ)」を設置することで暖かい空間を作り、自然の力を体感することができます。
山側からの風の取り込み口を兼ねた展望スペースの根室。雨天時の雨の雫や冬場のツララも楽しめる。
夏至の正午に太陽が真上となり、幻想的な光模様となります
風室の椅子と床面にある融氷水盤
毎年、六甲枝垂れの開業日である7月13日になると、氷を貯蔵した「氷室」の扉を開放し、六甲山上に吹く風を取り込む「氷室開き」を行います。
氷室を通った風は冷気となり、展望台内部の「風室」にある椅子のヒジ置き部分から風室内へ取り込まれ、真夏でも風室内は約20℃程度に保たれ、檜の香りと共にひんやりと心地良い空間が広がります。
展望台内部の風室の床面にある「融氷水盤(ゆうひょうすいばん)」
天井部からの雨水や氷室に保管されている氷が対応のエネルギーによって溶ける融氷水が溜る構造となっている。
六甲枝垂れの体験
六甲山からの景色を楽しむだけではなく、六甲山の日々の移ろいや四季折々の自然体験を肌で感じることができる展望台となっています。
ライトアップは伏見雅之氏によるもの。自然との調和を意識した柔らかいライトアップとなっている。
六甲枝垂れ概要
施設名 :六甲枝垂れ(ロッコウシダレ)
交通方法:六甲山上バス 六甲ガーデンテラス下車
郵便番号:657-0101
住 所 :神戸市灘区六甲山町五介山1877-9
営業時間:10時~21時(冬季は時間短縮)