やしま-るは、2022年建築家周防貴之氏(株式会社SUO一級建築士事務所)による瀬戸内の観光名所の一つ高松市屋島に新たなランドマークとして建築された。そのやしま-るの魅力についてみていきます。
建築家 周防貴之
2004年 慶應義塾大学理工学部卒業
2006年 慶應義塾大学大学院理工学研究科修了
2006年 妹島和世建築設計事務所・SANAA勤務
2014年 妹島和世建築設計事務所・SANAA退職
2015年 SUO設立
2006~2015年まで妹島和世建築設計事務所・SANAA勤務後独立した新進気鋭の建築家で。独立して最初に挑んだプロポーサルがこの「やしまーる」であった。プロポサールでは、藤本壮介氏や石上純也といった建築家を抑え最優秀者に選ばれた。
プロポーザルについて
屋島山上拠点施設基本設計国際プロポーザルの実施概要
最優秀者:株式会社SUO
SUO案(高松市HPより)
やしまーる施設概要
敷地面積3416.62㎡ 建築面積1178.58㎡ 延べ面積983.72㎡
屋島水族館に隣接し、高松市内や瀬戸内海の多島美を見渡せる獅子の霊巌展望台周辺に展望施設として新設。複雑な形をした計画地の外周に沿って展望広場やエントランス広場などが敷地をえぐるように半円状に配置され、広場の曲線をつないだリング状の施設となっている。
建築家周防貴之氏の挑戦
建築家周防貴之氏は「やしまーる」の構想について、建築を通して屋島のこの場所自体を設計の対象とし、この屋島のポテンシャルをどうすれば最大化できるのかから始めた。
そして、この場所を次の時代に継承すべく、建築がこれからの屋島のあり方を見つけるきっかけになればと考えた。
建築を通して、場所の地形的、環境的特徴を可視化、あるいは体験出来るようにすることで場所の持つ魅力をあぶり出したいと考えた。
建築が新たな価値をつくり出すというよりも、元来その場所に存在していた価値を建築を通じて説明するような感覚で取り組んだ。その結果、場所の魅力が顕在化されれば、その場の特徴に合わせて自らが使い方を導き出し、数十年後のその時々で必要な使い方を見つけ続けられのではないかと考えていった。
そして、地形や敷地自体の一部として存在できるような建築のあり方はないだろうかと模索していき、地形に呼応する地に有機的に組み込まれるような建築がこの場にはふさわしいとの結論に至った。
手法、特徴
南北は国立公園として保護された森に囲われ、西側には多島美が広がる瀬戸内海の風景があり、東側は水族館が賑わっている。そうした場所を拡張し、周辺にも自然に接続できる方法として、敷地の起伏に呼応する立体的な通路のような建築とすることで敷地に大小さまざまな広場を設置している。
起伏がある敷地に呼応する建築は、都市部で計画するような、すべてが直線的な部材の組み合わせでできるものではなく、平面も断面も連続して変化する形の建築が必要となり、敷地周辺や敷地内の場所性を鑑みて、それらの間を通過していくような、まるで周辺の地形の関係から形づくられる蛇行する川のような建築となった。
素材へのこだわり
屋島と隣接する庵治地区は彫刻家イサム・ノグチがアトリエを構えていた場所であり、「花崗岩のダイヤモンド」と呼ばれる庵治石の産地となっている。この庵治石が製品化されるのは全体採掘量の3%程度と言われており、製品化にならない97%部分を活用してどこか懐かしく新しい建築をつくりたいと考え、屋根全体を庵治石で仕上げている。
3万枚以上の石の瓦が整然とならべることで、これまで見たことのない新鮮さと同時に昔からそこにあったかのような場所性を宿した不思議な建築を創出させている。
屋島山上の特徴を上手く活かし、穏やかな瀬戸内の風土に合わせた「やしまーる」から眺める瀬戸内の多島美は屋島観光を活気づけさせる起爆剤になり、次世代に繋がる屋島となっていくであろう。建築家周防貴之氏の今後の活躍を期待したい。
屋島山上交流拠点施設やしま-る
所在地 :香川県高松市屋島屋島東町1784-6
電 話 :087-802-8466
営業時間:9:00~17:00
(金、土、祝日前日は21:00まで)
料 金 :無料
駐車場 :屋島山上観光駐車場(普通車300円)