ひろしま2045
ひろしま2045とは
広島市は被爆50年の1995年に50年後の2045年(被爆100年)に向けてデザインの社会資本を整備していく「ひろしま2045:平和と創造のまち」事業をスタート。
個性的で魅力ある都市景観の創造の推進を図るべく、広島市の都市景観形成において重要と認められる市の建設事業について、計画段階から建築・土木・ランドスケープ等のデザイン力に優れた設計者を選定、起用していく事業です。
平和と創造のまち対象プロジェクト選定方針
プロジェクト事業は、広島市実施計画に位置付けられた建設事業のうち、次のいずれかに該当する、構想策定、計画策定、設計等の業務の全部又は一部(意匠設計、デザイン監修等)が対象事業となっています。
- 歴史的景観や本市の地域資源である河川や海とのかかわりが深いもの
- 大規模プロジェクト等で新たな歴史的景観の創造にあたるもの
- 融合設計(建築、土木、ランドスケープなどの一体設計)により、優れた新景観の創造が期待できるもの
- 都心部の魅力を高めうるもの
- そのほか地区景観の重要な要素になりうるもの
西消防署(広島市HPより)
プロジェクト名 (デザイナー)
安佐南区総合福祉センター (村上 徹)
基町高等学校 (原 広司)
矢野南小学校 (富田 玲子)
平和橋 (岸 和郎)
東千田公園 (山本紀久)
段原リバーフロント地区建築誘導(錦織 亮雄)
猿猴川アートプロムナード (佐々木葉二)
西消防署 (山本理顕)
広島市環境局中工場
広島市環境局中工場は、広島市吉島にある清掃工場の老朽化による建替えに際し、ひろしま2045事業の指定を受け、1995年着工し2004年竣工した。
ひろしま2045事業指定理由
歴史的景観や本市の地域資源である河川や海の関わりが深く、市民の親水性を高め魅力ある水辺空間を創出するとともに、従来の清掃工場のイメージから脱却し周辺と調和した施設を整備する。
・デザイナー谷口吉生氏選定理由
水辺空間を生かし、周辺環境と調和したデザインに優れていることより選定された。
葛西臨海水族園(設計谷口吉生)
広島市環境局中工場特徴
都市の軸線を通す
谷口吉生氏は丹下健三氏が広島復興の基本とした「平和の軸:原爆ドーム、原爆慰霊碑、平和記念資料館を同一線上に並べた都市軸」の軸線上に広島環境局中工場が位置していることに気づき、その軸線を断ち切らないように、吉島通りを延長して海へ通り抜ける空間をつくることを提案した。
エコリアムから見た吉島通り
圧迫感をなくす
海に向かって大きな建物が建つことへの周辺への圧迫感に一つ切り返しをいれて、この高さを他の町並みの高さと揃える事によって、圧迫感を軽減して、都市の中にあるふさわしいボリューム感を造っていく。また、工場の中に光を通すガラス屋根による大規模な空間(アトリウム)をつくることで圧迫感をさらに軽減させた。
隠すのではなく、あえて美しくみせる
清掃工場は生活のために必要なものであるが、迷惑施設と考えられている。この施設から出る空気も排水も公害はゼロ。そのことを理解してほしいと考えていた谷口吉生氏は類似の施設を沢山見て回った。それらの施設の見学者ルートには小さな窓があって覗き込む仕様になっていた。それが非常につまらないと感じ、最後には関係者しか入れない所に入れてもらい見学をすると、そこには巨大なプラントが立ち並んでいた。それを見た谷口吉生氏は「これを展示物として一般にみせるべきではないか」との想いに至った。
工場は安心安全で都市のために貢献している。市民生活を支える大切な施設であることを理解してもらうためエコロジーとアトリウムをあわせた「エコリアム」というガラスで囲まれた通路をつくった。このエコリアムが平和の軸として海に通じる道となった。
焼却施設ギャラリーとして焼却施設の情報を聞けるボックスやパッカー車の展示などもされている。
工場内に植栽が施され、またアトリウムの天井が工場内を明るくしている。
エコリアム内には心地良い風が吹き抜け、清掃工場を感じさせない施設となっている。
工場すべてが洗練されたデザインとなっており、清掃工場のイメージを一新させていた。
このエコリアムの通路が平和の軸の延長線となり、地球環境と核廃絶の平和の道が海につながっている。