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やしま-るの魅力を探る

建築家周防貴之により設計された「やしまーる」

建築家 周防貴之

屋島は、香川県の観光名所の一つであり、山上からの多島海景観の眺望が楽しめるスポットとして高松市郊外にあります。屋島は眺望だけでなく、四国八十八ヶ所の一つ屋島寺や源平合戦が行われた地として人文景観も豊富な観光地です。しかしながら、観光客数は昭和47年の246万人をピークとして、近年では50万人台にて推移するなど長期低落傾向にありました。その、観光地屋島の活性化を図るべき計画されたのが「やしまーる」でした。

 
多島美が楽しめる屋島山上からの夕景

屋島山上からの夕景

建築家 周防貴之

磯崎新の設計による北九州市立美術館

S-HOUSE(岡山)

経歴

2004年  慶應義塾大学理工学部卒業
2006年  慶應義塾大学大学院理工学研究科修了
2006年  妹島和世建築設計事務所・SANAA勤務
2014年  妹島和世建築設計事務所・SANAA退職
2015年  SUO設立
2016年  妹島和世の木造個人住宅として設計したS-HOUSEを空間コーディネートと改修を実施

周防貴之氏は、2006~2015年まで妹島和世建築設計事務所・SANAA勤務後独立した新進気鋭の建築家です。独立して最初に挑んだプロポーサルがこの「やしまーる」であった。プロポサールでは、藤本壮介氏や石上純也といった建築家を抑え最優秀者に選ばれました。

プロポーザルについて

屋島山上拠点施設基本設計国際プロポーザルの実施概要

 屋島山上拠点施設は、山上の景観に調和し、屋島の歴史や価値を象徴する優美な外観とともに、来訪者のための諸機能が、高い構想力によってデザインされることが求められています。すなわち、その建物としての魅力や存在感が、高松市域にとどまらず、備讃瀬戸はもとより、広く瀬戸内海一円に及び、まさに瀬戸内海国立公園のシンボルとして、輝き続けるものとなることが期待されています。応募期間2015年8月13日~9月30日

最優秀者:株式会社SUO 

周防貴之氏の提案

SUO案(高松市HPより)

やしまーる施設概要

敷地面積3416.62㎡ 建築面積1178.58㎡ 延べ面積983.72㎡
屋島水族館に隣接し、高松市内や瀬戸内海の多島美を見渡せる獅子の霊巌展望台周辺に展望施設として新設されました。複雑な形をした計画地の外周に沿って展望広場やエントランス広場などが敷地をえぐるように半円状に配置され、広場の曲線をつないだリング状の施設となっています。

やしまーる
建築家周防貴之により設計された「やしまーる」

建物の形状は元来の高低差のある地形を生かした回廊型で各スペースには壁による区切りがありません。施設は、山上の景観を損なわず、周辺の自然環境に溶け込んだ外観とするために、ガラス面を広く採用しています。

建築家周防貴之氏の挑戦

建築家周防貴之氏は「やしまーる」の構想について、建築を通して屋島のこの場所自体を設計の対象とし、この屋島のポテンシャルをどうすれば最大化できるのかから始めた。
そして、この場所を次の時代に継承すべく、建築がこれからの屋島のあり方を見つけるきっかけになればと考えた。
 
建築を通して、場所の地形的、環境的特徴を可視化、あるいは体験出来るようにすることで場所の持つ魅力をあぶり出したいと考えた。

建築が新たな価値をつくり出すというよりも、元来その場所に存在していた価値を建築を通じて説明するような感覚で取り組んだ。その結果、場所の魅力が顕在化されれば、その場の特徴に合わせて自らが使い方を導き出し、数十年後のその時々で必要な使い方を見つけ続けられのではないかと考えていった。
 
そして、地形や敷地自体の一部として存在できるような建築のあり方はないだろうかと模索していき、地形に呼応する地に有機的に組み込まれるような建築がこの場にはふさわしいとの結論に至った。

屋島山上からの景色
建築家周防貴之により設計された「やしまーる」

手法、特徴

南北は国立公園として保護された森に囲われ、西側には多島美が広がる瀬戸内海の風景があり、東側は水族館が賑わっています。そうした場所を拡張し、周辺にも自然に接続できる方法として、敷地の起伏に呼応する立体的な通路のような施設となっています。

建築家周防貴之により設計された「やしまーる」

起伏がある敷地に呼応する建築は、都市部で計画するような、すべてが直線的な部材の組み合わせでできるものではなく、平面も断面も連続して変化する形の建築が必要となり、敷地周辺や敷地内の場所性を鑑みて、それらの間を通過していくような、まるで周辺の地形の関係から形づくられる蛇行する川のような建築となった。

建築家周防貴之により設計された「やしまーる」
施設の構成は、非常にシンプルであり、入館から退館するまで、緩やかに変化する外部に開かれた一筆書きのような透明な空間が連続しており、周辺の風景が視線と共に変化し、コントロールされた内部空間のスケールと合わせ、心地よい場を生み出しています。
建築家周防貴之により設計された「やしまーる」
建築家周防貴之により設計された「やしまーる」

素材へのこだわり

屋島と隣接する庵治地区は彫刻家イサム・ノグチがアトリエを構えていた場所であり、「花崗岩のダイヤモンド」と呼ばれる庵治石の産地となっている。この庵治石が製品化されるのは全体採掘量の3%程度と言われており、製品化にならない97%部分を活用してどこか懐かしく新しい建築をつくりたいと考え、屋根全体を庵治石で仕上げている。
3万枚以上の石の瓦が整然とならべることで、これまで見たことのない新鮮さと同時に昔からそこにあったかのような場所性を宿した不思議な建築を創出させている。

やしまーる

れいがん茶屋

「やしまーる」に隣接する飲食店。明治につくられたお店ですが、2022年にカフェとして改築されています。改築は周防貴之氏により手掛けられました。既存躯体は木造の瓦屋根の家屋で、1階部分の壁を取払い、室内はガラスの建具とし、建物のどこからでも周囲の景色を見渡すことができるようになっています。
また、敷地内を盛り土にし、既存屋根との多様な距離感を生み出しています。

季節や時間帯によって異なる屋島山上からの瀬戸内の多島美の風景を「やしまーる」は上手く表現する舞台となっていました。長く低迷していた屋島観光の新時代への起爆剤となるとともに、建築家周防貴之氏の幕開けでもあった。


屋島山上交流拠点施設やしま-る

所在地 :香川県高松市屋島屋島東町1784-6
電 話 :087-802-8466
営業時間:9:00~17:00
     (金、土、祝日前日は21:00まで)
料 金 :無料
駐車場 :屋島山上観光駐車場(普通車300円)


 

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