瀬戸内海に大きく突き出した大串半島には、総面積100ヘクタールにおよぶ大串自然公園が広がっています。瀬戸内の風景を楽しめる自然豊かな公園内に新たな魅力発信の施設として時の納屋が2024年6月30日にオープンしました。
大串半島
時の納屋の位置
さぬきワイナリーと瀬戸内の風景
大串半島の芝生広場に建設された温泉施設や宿泊施設などは、多額の投資により建設され、維持管理費が財政を圧迫。公金で赤字補てんする状況が常設化していたため、設備更新時期到来をきっかけに閉鎖となりました。
大串半島地図
建築家 堀部安嗣
堀部安嗣
1967年 横浜市生まれ
1990年 筑波大学卒業
益子アトリエにて益子義弘に師事
1994年 堀部安嗣建築設計事務所を設立
2016年 竹林寺納骨堂で日本建築学会賞
竹林寺納骨堂(高知県)
堀部安嗣氏の父親の故郷は徳島県であり、四国とのつながりは幼少の頃からあった。影響を受けたのは「近代建築と風土や自然を結びつけた」
フィンランドのアルヴァ・アールトであり、残り続ける「未来の原風景」を追求し、落ち着いた静寂な建築を得意としています。
堀部安嗣氏は、建築の設計図はどこか未来予想図を描くことと似ていると考え、何もない更地に建てられたその土地や地域や景観はどうなるかを意識してきました。
堀部安嗣氏が外観および内装を設計した瀬戸内クルーズ船guntuは、瀬戸内との調和をコンセプトにデザインされています。船体上部は瀬戸内の集落に見られる切妻屋根をイメージしています。客室は全て海が見えるように配置され、内装には木材が多用されています。
船体の色は海や空に溶け込むシルバーのguntu
時の納屋
ネーミング
納屋といえば、農家の人たちが農機具、種籾や収穫物を大切に保管しておく場所。これから先の時代、「環境、景観、自然と共生」し、心を癒やしてくれる豊かになる居場所として「時の納屋」と名付けられました。
「時の納屋」は人々の心の中で、過去・現在・未来の事をしまっておけるような場所をイメージしています。
外観
このプロジェクトでは、さぬき市民との伴走し、瀬戸内の自然を取り戻すこととし、建物を脇役に主役は大串半島の自然と考え、建物の大きさは小さく、自然の景観に沿ったものとして設計に取り組んでいます。
イメージ図
時の納屋までは「時の小径」の歩道が整備されています
アシンメトリーな屋根を持つ地上一階・地下一階の木造建てとなっており、長い方の屋根は、まるで斜面にへばりつくようにも見え、強風にもしっかり耐えられるイメージとなっています。
外壁は、杉の木で10年ほどたてば重厚な色合いとなり、まるで昔からあったような建築物の表情を醸し出します。
室内
大川町の木工職人二宮靖夫氏による家具
ランドスケープ
最初から大きな木を植えるのではなく、昔から大串で生育していた植物の苗や芝生が植えられています。そのため、芝生広場や時の納屋は時間の経過とともに自然と馴染んだ落ち着いた瀬戸内の風景となっていきます。
テアトロン
香川県内でも屈指の瀬戸内海の景観を楽しめる大串半島には、1991年に竣工した中四国一の規模をほこる多目的な屋外劇場があります。山本忠司氏による設計で、大串半島をエーゲ海のペロポネソス半島に見立て、ギリシャにあるエピダウロスの円形劇場(紀元前350年)をイメージしてつくられたすり鉢状の劇場。
斜面に並ぶベンチは石製で直径26mの円形ステージも石を組み合わせて模様を描いています。また、列柱は、照明やスピーカーとなっており、自然豊かな瀬戸内海の風景を見事に取り込んだ素晴らしい劇場です。
テアトロン
大串半島の景観を見事に活かした「時の納屋」は、時とともに無垢でできた建物は更に趣を増し、地元の樹木で植えられた芝生広場は、自然と一体化していき、讃岐の原風景になるでしょう。
今後の大串半島の整備により、隣接する「さぬき市屋外音楽広場テアトロン」と一体で楽しめるエリアとして、ますます注目されるでしょう。
時の納屋について
所在地 :香川県さぬき市小田2671番地75
営業時間:11時から16時まで
定 休 日 :火曜日
駐車場 :あり