福武トレスは、福武書店(現ベネッセコーポレーション)創業者の福武哲彦氏が、岡山市の半田山の稜線に沿ってつくった「福武書店迎賓館・庭園」に、娘の福武美津子氏が新エリアを加えて拡張し、復元した庭と建築が織りなす心休まるギャラリーです。
数寄屋造りの旧迎賓館(Fサロン)
福武トレス概略図
F STUDIOは企業研修などで利用されている
武井誠+鍋島知恵/TNA
建築家 武井誠
1997年 東海大学工学部建築学科卒業
1997年 東京工業大学大学院塚本由晴研究室
1999年 手塚建築研究所入所
2004年 鍋島知恵とTNA設立
建築家 鍋島知恵
1998年 日本大学生産工学部建築工学科卒業
1998年 手塚建築研究所入所
上州富岡駅
建築家ユニットTNAが手がけた上州富岡駅舎(2014年竣工)は、富岡製糸場最寄り駅でもあり、鉄骨煉瓦構造でつくられており、長さ88mの薄い大屋根が浮揚したデザインが特徴。駅舎は、グッドデザイン賞、日本建築学会賞、BCS賞特別賞を受賞した。
福武トレス Fギャラリー
TNAの武井誠氏は、「境界空間としての建築」を研究テーマとしてとりくんできた。家も植物と同じような繊細さを持って建てることで、自然と一体化となった居心地をつくってきた。
Fギャラリーでは、平面の三角形を不等辺でランダムの大きさとし、既存の樹木や岩の位置、新しく植える樹木の配置から、ギャラリーの展示作品に合わせて柱の間隔までも緻密に計算されてつくられています。
福武哲彦氏が愛用していた椅子や蒐集した美術品などが陳列されています。個人が愛した本物を、手が触れられるほどの親密な距離感で見ることができます。
透明なガラスに映り込む庭を借景にして作品が置かれています。
そこには、人と、作品と、自然の自由な関係が鑑賞という枠を超えて生まれており、それらは、時間帯や季節で表情が変わる豊かな作品世界が展開されていました。
福武哲彦氏が愛用したEames Lounge Chair and Ottoman
Fサロン
Fサロンは、「福武書店迎賓館・庭園」をかってのあり姿に復元したエリアです。そこは、福武哲彦氏が安らぎを得る場所として、ときには知人を招きサロンとして作り上げた特別の場所であった。
庭園は、数寄屋造りの家屋に寄り添うように、明治末期に登場した「自然風庭園」が小形研三氏の手によってつくられましたが、復元が必要となっていました。これらについても作庭家萩野彰大氏が現代的な解釈を加えつつ現代的な自然風庭園にアップデートさせています。
作庭家 小形研三
ハワイ大学東西センター日本庭園
1912年 佐賀県唐津市生まれ
千葉高等園芸学校(現千葉大学)卒業
卒業後数寄屋庭園を得意とする飯田十基氏に師事
新しい庭園概念への移行を強く感じさせた作風により、現代の庭園スタイル「雑木の庭」を誕生させた。
代表作のハワイ大学東西センター日本庭園(1963年)で米国造園家協会より日本人で初めて汎太平洋造園賞を受賞している。
福武哲彦氏の要望により敷かれた豪快な敷石道
半田山を借景とした庭園
福武哲彦氏が情熱を注いでつくりあげた特別な場所は、伝統的な数寄屋造りと半田山の借景を活かした雑木の庭となっており、心安らぐ自然風の庭園空間でした。そこに、未来に向かう場所として新たにつくられたギャラリーは自然に溶け込む建築となっており、庭と響き合う未来建築であった。
福武トレスについて
所在地 :岡山県岡山市北区津島福居二丁目5番6号
開館日 :金・土・日の週3日(HPより要予約)
入園時間:午前の部 10時~12時30分
午後の部 13時30分~16時
料 金 :1,000円
駐車場 :あり