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S-HOUSE ミュージアムの魅力を探る

S-HOUSE ミュージアム

建築家 妹島和世

S-HOUSEミュージアムは、妹島和世氏による木造住宅を奈義町現代美術館に携わった花房香氏が取得し、SANAAから独立した周坊貴之氏に空間コーディネートと改修を依頼し、新たにつくられた現代美術館。

建築家 妹島和世

香川県立アリーナ(SANAA)

経歴

1956年 茨城県日立市生まれ
1979年 日本女子大学家政学部住居学科卒業
1981年 日本女子大学大学院家政学研究科
     住居学専攻修士課程修了
1981年 伊東豊雄建築設計事務所に入所
1987年 妹島和世建築設計事務所設立
1995年 SANAAを西沢立衛氏と設立
2004年 金沢21世紀美術館
2006年 海の駅なおしま

2010年、瀬戸内の犬島の集落に「日常の中の美しい風景や作品の向こうに広がる身近な自然を感じられるように」との願いを込め、妹島和世氏による民家のリノベーションなどによる、ギャラリー「家プロジェクト」が展開されるなど、瀬戸内にはたくさんの妹島和世氏とSANAAの作品があります。
2010年には米プリツカー賞に妹島和世氏とSANAAのパートナーである西沢立衛氏が選ばれています。1995年の安藤忠雄氏に次いで4度目の日本人の受賞で、女性としては世界で2人目の受賞となりました。
 
妹島和世氏のデザインは、シンプルでありながらも革新的で、透明感と軽やかさを持つ建築物となっているのが特徴です。


妹島和世による木造住宅

設計は後にパートナーシップSANNAを組む妹島和世氏と当時所員の西沢立衛氏が担当しました。1996年(平成8年)にS-HOUSEとして完成。

設計に求められたのは、3世代6人家族の住宅であり、居室と団らんの場を、限られた敷地内に形成することでした。

S-HOUSEの回廊

家族構成と要望

家族構成は、祖父と祖母、父と母の4人が全員働いていて、小学生の子供が2人。祖母、母のどちらか早く帰ってきた人がご飯をつくるということで、共同生活でありながら、お互いに独立している家族。
施主からの要望は、6人で一緒に暮らすにあたって、暮らし方をどうしたらいいか、それが分からないから、考えてもらいたいとのことであった。

3世帯家族が住むための空間

  • 空間に距離を生み出す
  • みんなが一緒に住むという一体的なまとまりをつくる
  • お互いの生活を干渉しすぎないような距離を各室につくる

建物内部は、2層分の吹抜に回廊を4周に巡らせて、各室を囲む空間構成となっています。それは伝統的寺院の住居棟である方丈にも似た平面形式の現代化ともいえる。1階の各室へは回廊から出入りし、2階にはキッチンとリビングダイニングが配され、みんなの広間的な感じになっています。
 
1階のそれぞれの部屋は背中合わせとなっており、ダイレクトに窓を付けると道からまる見えになりますが、回廊という中間領域を通して光を入れたり風を入れたりすることができます。どの部屋も二方向が回廊に面しており、ニカ所を開ければ風が通ります。全部開けると、広縁のように一体的に部屋を広く使うことができます。回廊は吹抜けとなっており、上の部屋から下の人に声をかけることができます。

S-HOUSE
S-HOUSE

回廊は、各室を結ぶ動線スペースであると同時に、外気の負荷から守るバッファーゾーンともなっています。

S-HOUSE回廊

各室は連続折れ戸や可動ルーバーによって回廊から仕切られながらも自由な開閉が可能で、回廊と各室、各室間の関係を時々で変化させて多様な使い方ができる可変性をもった画期的な住宅となった。

S-HOUSE

二階リビング(現在は展示室)

S-HOUSE

トイレ(現在は展示室)

外観

S-HOUSE

住宅は、密集した住宅街にあり、プライバシーがあまり外に露出しないようにしながら、外の光や風を取り入れることができるよう、道路側はスレートの波板で、庭側と小さな私道のような部分は、ポリカーボネイトの波板となっています。それらは、半透過性を帯びて緩やかな内部と外部との関係性をもたらしています。
 
建物ボリュームを限りなく単純立体化したうえでの表層素材の探求、とくに半透明性を帯びた様相は、外観のみの効果にとどまらず、外壁を通して回廊内部は明るく半屋外的なスペースとなり、時間や季節のうつろいを淡く体感できる作者特有の空間性デザインの特徴が現れています。

美術館への転換

建物は、現代美術のコレクターである花房香氏が取得し、2016年現代アート美術館に転用されます。この改修は、SANAAから独立した周防貴之氏により実施され、一般の住宅から現代アートを展示する美術館へコーディネートされています。

コンセプト

ミュージアムは、瀧口修造氏の思想を受け継ぎながら、形式は第三世代美術館に続く新たな美術館のあり方である前方視的ミュージアムを提案しています。
それは、現代日本の芸術の最先端を体験できる美術館としてつくられています。
7アーティストと10年単位で契約し、1アーティストが1部屋ずつ展示を担当しています。
アーティスト
チン↑ポム、下道基行、高田冬彦、伊東宣明、毛利悠子、目、加藤泉
 

チン↑ポムの部屋

チン↑ポムの部屋

リビングにある加藤泉作品
リビングにある加藤泉作品
二階リビングにある加藤泉作品
S-HOUSEとチン↑ポム・カー

S-HOUSEとチン↑ポム・カー

チン↑ポムのメンバーが、各地の展示会場に作品と展示用具と共に向かう時、使っていた車。彼らの芸術行動の痕跡を作品化しています。

基本情報

住 所: 岡山県岡山市南区浦安南町445-8
開館日:土曜日、日曜日、祝日の月曜
時 間:10:00-18:00
入場料:投げ銭制

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